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7月23日(日)
昨晩、音を立てて雨が降った。明け方まで降り続いたが、出発前にはあがった。美しい澄んだ朝の空気を肺いっぱいに取り込んで家を出た。
私とリュウさんを護るようにして犬が先導する。昨晩の雨のせいで、マン川は少しだけ流れが速く見えた。
川岸からプルメリアの花を流す。
川の流れに乗って遠くに行ってしまう花を目で追った。
ナーガの橋を歩きながら、滞在の日々を反芻する。
ダーンサーイでたくさんの蝶を見つけた。
きょうはどうしてもあなたに蝶の話を届けたい。蝶がイモムシからサナギになるとき、イモムシは体のほとんどを溶かしてしまう。そして翅や脚など体のパーツとして再構築され、空を飛ぶ蝶に変態する。その液体の中に、イモムシだった頃の記憶は残っているのかな。サナギの殻を破って蝶が外界に舞うときも、前から自分は蝶だったと思い込んで、本当は何者だったのか覚えていないのかもしれないね。でもね、私は知っているよ。あなたは葉を食むイモムシだったんだ。
私はまだイモムシなのだろう。そんな私がいつか蝶になれる日が来たとして、ここで過ごした日々がどろどろに溶けてなくなったとしても、私はどこかの空を飛んでいる。あなたが私を見つける、それより前に、たぶんあなたを空から眺めていられるはずなんだ。
青々とした田んぼを前に、私はひとり歩き出した。陽の射し込む田んぼに蝶がひらひら舞っている。
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